大原櫻子のファーストアルバム「HAPPY」を聴いていると、
まずダイナミックレンジ(音域ではなく、声量の幅)が広いのと、
声量を上げる時の立ち上がりが早いなあ、という印象がある。
腹筋と声帯が強靭なんだろうなあ、とかね。
歌い方そのものは実にシンプルなので、松たか子あたりに近い。
で、曲調も詞の内容も大方はポジティブであるので、
オッサンとしてはちょっと若さが眩しすぎるというか、
ともすればオトナにとって都合のいい優等生少女、という
印象になりかねないのだが。
アルバムを通しで聴いていると、最後に収録された
「ワンダフル・ワールド」だけ明らかに異質なんだよね。
(あとは全然ベクトルが違うが「のり巻きおにぎり」が、
それはそれで異質)
端的に言うと、
「いろいろつらいことや失うものもあるけれど、
きっと本当はこの世界は素晴らしいのだろう。
だからそれを信じて一緒に歩んでいこう」
っていう歌なんだろうと俺は解釈している。
でも、主人公は言うても10代の少女なので、
(僕ら って言ってるけどね。日本の少女歌手の「僕」は、
必ずしも男性の一人称ではないとかなんとか)
世界が素晴らしいということを信じきれないでいるからこそ、
自分を勇気づけるために、呪文のように「世界は素晴らしい」と
繰り返しつぶやくのだ。
と。
で、この曲がアルバムの最後にどっしりと控えていることで、
このアルバムは明らかに全体として締まった印象になっているし、
歌手にとって「一つのイメージ」に固定されてしまうことは、
表現上明らかに不幸だ、ということは歴史からはっきりと言える。
(バラードのヒット曲の後はスランプになる の法則、とかね)
これから大原櫻子という歌手がキャリアを積んでいくうえで、
この曲が多様な表現を身につける「初めの一歩」になるといいな、
と思う。
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