2015年6月12日金曜日

大原櫻子「ワンダフル・ワールド」が深い件。

大原櫻子のファーストアルバム「HAPPY」を聴いていると、
まずダイナミックレンジ(音域ではなく、声量の幅)が広いのと、
声量を上げる時の立ち上がりが早いなあ、という印象がある。

腹筋と声帯が強靭なんだろうなあ、とかね。
歌い方そのものは実にシンプルなので、松たか子あたりに近い。

で、曲調も詞の内容も大方はポジティブであるので、
オッサンとしてはちょっと若さが眩しすぎるというか、
ともすればオトナにとって都合のいい優等生少女、という
印象になりかねないのだが。
アルバムを通しで聴いていると、最後に収録された
「ワンダフル・ワールド」だけ明らかに異質なんだよね。
(あとは全然ベクトルが違うが「のり巻きおにぎり」が、
 それはそれで異質)

端的に言うと、
「いろいろつらいことや失うものもあるけれど、
 きっと本当はこの世界は素晴らしいのだろう。
 だからそれを信じて一緒に歩んでいこう」
っていう歌なんだろうと俺は解釈している。

でも、主人公は言うても10代の少女なので、
(僕ら って言ってるけどね。日本の少女歌手の「僕」は、
 必ずしも男性の一人称ではないとかなんとか)
世界が素晴らしいということを信じきれないでいるからこそ、
自分を勇気づけるために、呪文のように「世界は素晴らしい」と
繰り返しつぶやくのだ。

と。


で、この曲がアルバムの最後にどっしりと控えていることで、
このアルバムは明らかに全体として締まった印象になっているし、
歌手にとって「一つのイメージ」に固定されてしまうことは、
表現上明らかに不幸だ、ということは歴史からはっきりと言える。
(バラードのヒット曲の後はスランプになる の法則、とかね)

これから大原櫻子という歌手がキャリアを積んでいくうえで、
この曲が多様な表現を身につける「初めの一歩」になるといいな、
と思う。

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