2014年7月2日水曜日

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5年前、北関東の田舎町。

サキは仲のよい友達何人かと連れ立って、地元の伝統ある神社のお祭りに足を運んでいた。

同年代の少女たちよりも少し背が高いが、シャイなところがあるサキは、単にサイズの関係で大人っぽいデザインになってしまった自分の浴衣が友達から浮いていないか気にしながら歩いているうちに、友達とはぐれてしまっていた。




時々足を運ぶ神社ではあったし、はぐれたときに落ち合う場所も決めてあったのだが、夜の暗がりと照明の明るさのギャップや、普段の閑散とした様子とはあまりにも差がある人混みにやられ、すっかり方向感覚を失っていた。




ここはどこだろう。

玉砂利と履き慣れない下駄で足が軽く痛む。

もうどれくらい歩いただろうか。

本当はものの30分も経っていないのだが、見た目の大人っぽさとは裏腹に神経の細いサキは、不安に駆られてあちこちふらふらと、根拠のない勘に任せて境内を歩いていく。

屋台で友達と食べた具のない焼きそばや、着色料てんこ盛りのあんず飴はすでに成長期の胃袋に消化し尽くされ、お腹も空いてきた。




心細さに泣きそうになり、鼻の奥がつーんとする。

ダメだ、泣くな。泣いたらもっと心細くなる。

鼻から息を強く吸い込んで顔を上げた瞬間、サキの視界の先にぼんやりと薄明かりに包まれた、白い何かが目に入った。




(なんだろう、あれ)

サキはショートカットのかぶりを振って、あたりを見回す。

祭りの喧騒は相変わらずサキの後ろ、小路を1、2本隔てたところにあり、さすがに大きく離れたところに迷い込んだわけではないことを再確認できた。




それが好奇心であったのか、自分の現在位置を大雑把とはいえ確認できたことで気が大きくなったのか、誰にも説明はできないのだが、とにかくサキは、その白い薄明かりの正体を確かめてみたくなった。

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